蒼褪めた視線

僕が断罪されるのは、君の所為じゃない。
苦しまないで、愛しい人。
皆を欺き、君の心を弄んだ、それは僕自身の罪。

死刑宣告を聞きながら、内心でほくそ笑む。
これで漸く、僕の役目は終わる。
セピア色に霞む視界の中、君だけが鮮やかに浮き上がる。

真実を明らかにする為に、僕自身を差し出そう。
その言葉の半分は本当、半分は嘘。
皆を騙し続けて来た僕の、それは最期の大芝居。

  どうか弁明をして。身の証を立てて。
  自ら処刑台に上がる貴方を、私はもう止められない。
  せめて、私を一緒に連れて行って。

涙ながらに語る君に、僕は歪んだ喜悦を覚える。
君が漸く、僕の気持ちに応えてくれたから。
最期の瞬間にきっと、僕は君の言葉を思い出す。

溢れる涙を隠そうともせず、僕を見詰める君。
空々しい台詞を並べ立て、君に微笑いかける僕。
そんな三文芝居も、そろそろ終幕に近い。

  最後まで一緒に居てあげられなくてごめん。
  一緒に連れて行ってあげられなくてごめん。
  でも僕はずっと君を見守ってるよ。

君が好きだ。重荷を背負う君を支えてあげたい。
あの言葉に嘘はない。
君を騙し続けて来た僕の、それは唯一つの真実。

死刑宣告を聞きながら、安堵の溜息を吐く。
これで漸く、僕は楽になれる。
蒼褪めた視線の向こう、君だけが艶やかに浮き上がる。

僕が断罪されるのは、君の所為じゃない。
哀しまないで、愛しい人。
己を偽り、君の心を踏み躙った、それは僕自身の罪。



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