海辺で自由に舞う君を見ていた。
束の間の休暇を君と二人きりで過ごしたくて。イキナリ呼び付けた俺を咎めもせずに、君は一緒に来てくれていた。あの日、俺達が初めて気持ちを通わせた、この静かな海に。季節外れの今は、他には誰も居ない。俺達だけだった。
君は片時もジッとしていない。子供の様に走り回り、踊る様に手足を閃かせ。時折俺の傍に戻ってきてはまた駆け出していく。俺はただ、そんな君を見つめていた。
しなやかな細身の体と、それに続くスラリと伸びた四肢。太陽を溶かし込んだ様な、やや赤みを帯びた長い金の髪を風に靡かせて。瞳は晴れた夏の空と同じ、澄みきった青。その全てが俺には眩しくて。こんなにも愛しくて。
俺は君から目が離せないでいる。
自分が再び、こんなにも誰かを愛せる様になるなんて。いまだ信じられないでいる。あの時、あの場所で、彼女の死と共に凍り付いた俺の時間。それを溶かしてくれたのは君だけだった。
喪ったものを頑なに抱き続ける俺に想いを寄せて。俺が一歩を踏み出せる迄、ずっと待ち続けて。漸く自分の気持ちに素直になれた俺を、君は微笑って受け止めてくれた。
それなのに未だに君の求める言葉を与えてやれない俺を、君は黙って許してくれる。その一言が、今はまだどうしても言えないのだと、口に出さなくても分かっているから。幾らでも待つと、そう態度と言葉で伝えて寄越すのだ。
君がその、邪気の無い笑顔を俺に向ける。たったそれだけの事なのに、ソレが俺の胸をこの上も無く熱くさせる。だから俺は、何も言えずに君だけを見つめている。
何も要らない。何も欲しくない。君さえ俺の傍に居てくれるならば。それだけで俺には充分だ。これ以上、何も望む事は無い。
俺はじっと佇んだ壗で、飽きる事無く君を眺め続けていた。何時の間にか傾き掛けた夕陽の中で、君の姿がシルエットに変わる。随分と長い間、俺達は此処にいたらしい。阿呆の様に君を見つめていた自分に気付き、今更のようにひどく照れ臭くなる。
「そろそろ帰るぞ」
ぶっきら棒に声を掛ける俺を、君は明るい笑顔で振り返る。
「もう少しだけ」
子供がねだる時の様な口調で答え、いけない?と俺に甘える笑みを向けてくる。君にそんな顔をされては、俺が断れないと分かっている癖に。仕方の無い奴だと苦笑して、俺は肩を竦めてみせる。
君が望むなら、どんな些細な事でも叶えてやりたい。本気でそんな事を思ってしまう自分に、俺はまだ戸惑っている。何時まで経っても慣れる事が出来ないでいる。
けれどソレは決して不快ではなくて。それ程迄に愛しいのだと、君への想いが深いのだと、そう俺に自覚させてくれるから。俺はこの感情を持て余しつつも、目を逸らさずに見据えている。
もう少しだけ、この壗君の笑顔を見つめていよう。今はまだ、言葉に出しては伝えられない、君への熱い想いを瞳に込めて…。