Happy Birthday To You.

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おめでとう、なんて言わないで。もう誕生日が嬉しい歳じゃないわ。

斜に構え、大人ぶって、そんな風に君は言うけれど。
でもそれは、本当に嫌がってる訳じゃなくて。ただの照れ隠しだと分かっているから。
僕は、敢えて口に出して言ってみる。

お誕生日おめでとう。そして、ありがとう。
君がこの世に生まれてきてくれた事に。二人が出会って、今日という日を僕と迎えてくれる事に。また新たな一年を、共に歩んでくれる事に。

そんな風に言う僕に、君は何も答えない。くるりとそっぽを向いてしまう。
でもそれは、本当に嫌がってる訳じゃなくて。ただの照れ隠しだと分かるから。長い髪の間から見える君の横顔が、紅く染まっているから。
そう指摘して笑ってやったら、君は完全に背中を向けて、手で耳を塞いで。拗ねたふりをする君に、僕は慌てて宥めたり賺したり。暫くは、他愛無い遣り取りが続いて。

ありがとう。

君は、確かにそう言った。聞こえるか聞こえないかギリギリの、小さな小さな声だったけれど。
僕が何か答える前に、君が悪戯をしかけて。また新たな莫迦騒ぎが始まって。それが君の照れ隠しだと、分かっているから。
心の中だけで、そっと付け加える。

生まれてきてくれて、ありがとう。
そう言ってくれて、ありがとう。
そんな遣り取りの出来る君でいてくれて、本当にありがとう。

でもこれは言わずにおこう。折角の誕生日に、また拗ねられたら困るから。

 

―― Das Ende. ――


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