釣人の独白



 この連邦に入国して以来ずっと、俺は海で生業を立てている。理由は…やっぱり海が好きだって事なのかな?広大な海を見ながら釣を楽しむ。正に趣味と実益を兼ねた、俺にとっては天職って奴だと思うね。
 新しい街に着くと何時でも、俺は先ず海に向かう。漁場でゆっくりと釣糸を垂れながら、静かに考え事をするんだ。今迄に旅してきた想い出の地を。これから足を踏み入れる筈の新天地を。そして沢山の仲間達との、出会いと別れを…。
 念の為に言っておくが、釣果の方も中々のモンなんだぜ。時には漁場で出会う地元の釣人がベストポイントを教えてくれる事もあるし。そのお陰で、旅人の俺がチャッカリ翌年の漁長を頂戴しちまったりもする。

 タマに頭の片隅で、訓練がどうとか言ってる奴がいる気はするが。俺は決して相手にしない様にしているんだ。俺の人生は、俺が自分で決める。例えソレが誰であろうと口を出して欲しくない。
 ―― なんてエラそうに言ってはみたが。結局、ボーッと釣糸を垂れてるのが好きなんだよな、俺。

 それはそうと、年末の選挙で漁長を頂いてしまった時の事だが。その場合、俺は必ず翌年の会議まで滞在する事にしている。職長会議で発言してから移住するんだ。折角与えられた権利、ちゃんと行使せんと勿体ないからな。
 そんな訳で、俺は様々な街に莫迦げた台詞を残している。時には移住先で自分の足跡を確認してみたりする。俺の下らない発言は、ある街では残り、別の街では後任のソレに塗り替えられていた。
 かつての自分の発言を後生大事に掲げてくれてるのは、やっぱり嬉しいモンだ。旅人の醍醐味って奴だね。ま、内心『ソレで良いのかよ?!』とか、余計な心配もするんだが。

 そうやってアチコチの漁場を荒らし回りながら、俺は連邦中を旅している。ソレは多分、これから先も変わらないだろう。変える気もない。コレが俺の生き方だから。俺は俺自身でしか在り得ないから。
 旅の途中で見付けたもの。様々な表情を見せる街。一つに繋がっていながら刻々と変化する海。そして其処で出会った沢山の人々…。
 きっとそれ等に魅せられて、俺は旅を続けていられるのかも知れない。

 …否、もしかしたら。本当の処、俺はただ単に、飽きっぽいだけかも知れない(笑)。

 

―― Das Ende. ――



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