誰が為に戦う 莫迦戦闘奇譚 volume1



 これは俺が、傷心の旧友を慰めに行った時の話だ。こんな事態になるなんて、最初は誰も、俺自身でさえ想像も出来なかったんだ…。

 F君は俺の旅団時代からの旧友で、寿退団後はA街に定住していた。長男は既に独立して、彼の跡を継いで旅団に入団した。愛妻を亡くした彼が一人きりになってしまったと聞いて、俺は会いに行ったんだ。
 久々に再会したF君は、思いの外元気そうだった。俺達は一頻り昔話を楽しみ、何時しか話題は互いの近況に移っていった。そして…。
「JD君(俺の事)は相変わらずアヤシイ薬を行商してるのかい?」
彼のソノ一言が、俺を刺激した。
「今はかなり手広く品揃えしてるぜ。試してみるか?」
そう答えて一つの黒い球を彼に投げ渡す。咄嗟に受け取ってしまうF君。
「ソレは新開発の爆弾でな。追尾機能付き、しかも解除不能な代物さ(笑)。」
 実はF君は火器のエキスパートなんだ。何でも母上が某所で火薬班に勤めていたとかで。一人息子の彼もその血を受け継いで、火器に詳しいらしいと聞いている。俺は以前からコノ新製品を試したくて、ソレには彼が適任だと思ってたんだ。
「解除不能?!卑怯だぞ、JD君!」
 ―― キッチリ承知でやってるさ。やはり商人としては商品のチェックは欠かせないからな(笑)。
 逃げ惑う彼を、その追尾機能で正確に追い込む新型爆弾。俺は少し離れた場所からその様子を眺めていた。一応は解除キーの購入を勧めてみたが、彼は自力で処理する方を選んだんだ。やはり火薬班のプライドって奴なのかね?
 そして彼は見事にやってのけた。俺の新型爆弾を自家製の特殊弾で中和、無力化したんだ。成る程ね。そういう手があったか。
 直ぐ様、彼の反撃が始まる。流石は火薬班の血を引く男。持ちネタ(笑)は豊富にあるらしい。ウカウカしてると俺の方が危ない。コチラも本気でいかせて貰うぜ!
 俺達は最初は冗談半分、次いでやや本気になり始めていた。見た事も無い爆弾を次々と繰り出すF君。俺も売り物の武器(爆)を駆使して応戦。事態はかなり大事になりつつあった。だが、まだこの時点なら。何とか矛先を収める事も出来た筈だった。だが…そうは問屋が卸さない。ココにもう一人、『奴』が加わってしまったのだ。俺達より更に危険な『アノ男』が…。

 やって来たのは旅団二番隊一期生きっての武闘派、『遅れて来た侍』 ―― このキャッチコピーは俺が勝手に付けたんだけど(笑) ―― JB氏。何を隠そう…って別に隠してないけど(笑)、彼はかつて俺の部下だった。その強さで数々のタイトルを総舐めにした、旅団歴代団員でも最強の男。そんな彼がこの騒ぎを目の当たりにして、傍観していられる訳も無かったのだ。
 再会の挨拶もソコソコに、JB氏も加えて三つ巴の混戦状態に突入した。事態は更に紛糾の度合いを増していく。F君の特殊爆弾。JB氏の冴える剣技。俺の変則的…ってゆーか、どっちかってぇと反則的な(爆) ―― 四次元リングとか ―― 武器。各々が自慢の得物で秘術の限りを尽くす。
 静かな街に響く、騒音・爆音・剣戟の雨霰。俺達だけが莫迦騒ぎを繰り広げる。大人しい地元民達は誰も手が出せず、ただただ静観しているだけだった。否、もしかしたら。単に呆れ果てていたのかも知れない。
 やがてJB氏は激しい戦闘で傷付いた佩刀を捨てて、闇商人から最強と言われる剣を買い求めた。その名も高き、鋼鉄も切れる業物『斬鉄剣もどき』だ。勿論コンニャクとダイアモンドは切れないけど(笑)。
 因みにソレを売ったのは俺。事もあろうにJB氏は、自分が闘っている当の相手から、己が命を預ける武器を購入したのだ(苦笑)。―― それをいうなら、商売優先で目の前の敵に武器を売っちまう、俺も俺だけど(自爆)。
 その間にも、決着が付かない不毛な闘いは続いている。焦れた俺は遂に、膠着状態を打開すべくアレを投入する事にした。そう、かの高名な兵器職人S氏から譲り受けた『ゴヂーラ』。体長四m、放射能を燃料に口から火炎を吐く、歩く最終兵器ともいうべき奴だ。今こそ奴の威力を試す時が来た!
 生ける凶器出現に形勢逆転と見て、すかさず寝返るF君。一方のJB氏は、果敢にも自慢の愛刀を振るいゴヂーラに立ち向かう。凡そ鬼神の如き闘いぶりだ。…って、だからソレは俺が売った刀だっつーのに(爆)。
 しかもJB氏は何時の間にか神掛かりな技を身に付けていた。呪文一喝、式神なんか呼び出してるし。一体どーする気なんだよ、オイ?!侍なら剣一筋に生きようぜ!!
 勿論、そんなトボケた御意見が聞き入れられる訳は無い。攻撃が功を奏して調子に乗ったJB氏は更に、風神・雷神なんて狩野派の屏風絵みたいな組み合わせまで呼び出す始末。戦場はひたすら混迷の一途を辿っていく…。
 オマケに再度の形勢逆転を見て取って、F君は一人だけ煙幕で姿を隠してしまう。俺と手を組んだ筈だろうが?!
「後は任せたからね♪」
「俺一人に任せるなんて卑怯だぞ!」
「卑怯はお互い様だろう、JD君?(笑)」
 ―― 確かに(爆)…なんて納得してる場合じゃないって、俺(汗)。JB氏の標的は今や俺一人に絞られた。状況はかなりヤバい。F君が戻ってくれる気配も無いし。
 こうなったら仕方がない。奥の手を出すか!
 そして俺の最終手段ともいうべき禁じ手が炸裂する。
「俺はもう移住するから。後は二人で勝手にやってくれ!」
 伝家の宝刀、『移住』 ―― この場合トンヅラとも言う(笑) ―― を宣言。余りの反則技に固まる二人。ソレを尻目に俺はサッサとA街を後にした。

 その後、二人がどうなったのか?ゴヂーラを無力化する事が出来たのか?
 それは神のみぞ知る…。

 ―― ってゆーか、俺の知ったこっちゃないっての(爆)。

 

 

≪後日談≫
 A街に放たれたゴヂーラは、F君が上手く手懐けてしまったらしい。その後は、彼の孫達の良き遊び相手になったそうだ(笑)。
 そして更に、F君・JB氏と俺は、別の街で再会する事になる。それがまた新たな戦闘の幕開けとなるのだった。
 だがソレは、また別の話…。

 

―― Das Ende. ――



翠の工房へ戻る
Home
≪Prev.  Next≫
連邦物語へ戻る