終り無き喧騒の日々 莫迦戦闘奇譚 volume2

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「最近はこの街も人が減って、淋しくて…。良かったら遊びに来て下さいね。」
 某嬢からそんなお招きを受けた俺は、一路C街へと向かっていた。やはり貴公子様(笑)としては、女性の頼みは断れないからな。どうせ当ての無い放浪者、何処へでも行くさ。

 辿り着いたC街は、確かに寂れていた。完全な過疎地と化しているといった方が正しいかも知れない。当時の人口は七割方が旅人。オマケに全員が俺の知り合いだった。どうやら某嬢は俺だけではなく、同様のお誘いをアチコチにバラ撒いていたらしい(苦笑)。
 懐かしい顔触れと旧交を暖める旅人達。期せずして同窓会の如き様相だ。
 『彼』が来たのは、そんな和やかムードの最中だった。そう、我が戦闘ごっこ仲間(笑)のF君。某嬢は彼にも声を掛けていたのだ。
 この再会に俺達は困惑した。仕方ないさ。先日まで爆弾を投げ合っていた相手が、目の前に居るんだからな。
 気まずい雰囲気の儘、取り敢えずは挨拶を交わす。そして…。
「此処は一つ、大人になろうじゃないか。」
「お互い平和的にいこうな。」
 どちらからともなくそんな会話を交わし、俺達は仮初めの休戦協定を結んだ。某嬢の住む街を莫迦げた戦闘に巻き込みたくはない。そう思ったんだ。それが無駄な気遣いだと、その時の俺達はまだ知らなかったから。
 二人揃えば話題はやはり例の莫迦騒ぎの事になる。互いの健闘(?)を称え合い、攻撃力を評して。そして今は居ない、『アノ男』を思い出す。
「JB氏、今頃どうしてるのかなぁ?」
「奴の事だ。相変わらず日々鍛練に努めてるんじゃないか?」
「もしかして、彼も招ばれてたりして…。」
「まさか!」
 まさか…だよな。冗談と知りつつ、ツイ背後を確認してしまう俺達。勿論、其処に彼はいない。お互い苦笑を浮かべ、仲間達の交流の輪に戻った。

 そんなある日の事だった。訓練場にいた俺は、不意に声を掛けられた。
「久し振りだな、JD。一緒に訓練しようぜ!」
聞き覚えのある声。ゆっくりと振り返る俺の目の前に、『奴』が笑っていた。
「JB氏…!!」
 紛れもなく『遅れてきた侍』 ―― だから勝手にキャッチコピーだってば(笑) ―― JB氏、その人だった。嘘から出た誠とはこの事だ。まさかマジで来るとは(汗)。淋しがり屋の某嬢、この男まで招いちまったらしい。
 遂に莫迦戦闘仲間が三人とも揃っちまった。F君と俺は、呆然と顔を見合わせた。束の間の平和が音を立てて崩れ落ちていく…。
 それでも最初は、俺達も平和的共存を試みたんだぜ?折角の和やかな雰囲気をブチ壊したくはなかったからな。内心で互いの出方を窺いつつ、表面上は穏やかに言葉を交わして。
 しかし、何度も繰り返すが、そんな気遣いは無用だったんだ。例の莫迦騒ぎの噂は思った以上に広まっていたらしい。周囲から期待で一杯の視線が突き刺さる。ハッキリと戦闘再開の要求を口にする、物騒な方も居たりして(苦笑)。
 もう誰も俺達を止められない。…ってゆーか、誰も俺達を止めてくれないし(嘘泣)。皆様のご要望にお応えして、ココに再び戦闘の火蓋が切って落とされたのだった。

 先ずは小手調べ。お互いまだ遠慮があった俺達は、爆竹に毛の生えた様な代物を投げ交わす。しかし三人ともあの戦乱を潜り抜けた強者達だ。そんなモンで満足出来る筈も無かった。それに第一、ギャラリーが納得しなかったし。
 俺達の攻撃は徐々にエスカレートしていった。攻撃の度に爆弾の数が増し、その威力が増して。遂にはピラミッド状に積み上げた爆弾を纏めて投げ合う事態に相成った。ソッと相手の背後に忍び寄り、笑顔で爆弾投擲、一目散に逃走する。そんなフザケた戦闘振りで。A街と違って、此処は某嬢の居住地だから。俺達の破壊活動も多少の遠慮が残っていたんだ ―― 取り敢えず、その時は(笑)。
 しかし事態は急変した。俺達の戦闘に触発されて、滞在中の現旅団員T嬢が飛び入り参加を宣言したのだ。女性といえども、流石にT嬢は現役旅団員。俺達に負けじと腕一杯の爆弾を投下する。
 うら若き女性の参加に俺達は色めきたった。盛り上げようとのサービス精神からか、飛び交う爆弾の数が幾何級数的に増加する。…って、そんなサービスいらねぇんだよ(苦笑)。
 そして俺達『莫迦三人衆』に紅一点のT嬢を加え、騒乱は最高潮を迎えたのだった。

 しかも呆れた事に。その時飛び交っていたのは爆弾だけではなかった。爆弾に混じって何故かハァトが多数。恋多き『魔性の女』某嬢と、複数の男達 ―― JB氏と俺も含む(笑) ―― の、一対多数で恋の鞘当て真っ盛りだったのだ。勿論、勝者はこの俺さ。何たって貴公子様だもんな。
 必然的にその他大勢の立場に甘んじる、可哀相な我が友JB氏。俺は彼に勝ち誇った笑みを投げ、次いでF君を振り返った。其処に俺が見たモノは…。
「オ、オイ!!何してるんだ、君?!」
「いやぁ、何時の間にかこうなってたんだよねぇ(笑)。」
 其処には何故か、人妻と見つめ合うF君の姿があった。一瞬、俺は自分の目を疑った。俺はともかく、愛妻家だったあのF君が。まさか人妻と恋に落ちるとは。人間ってのは分からんモンだよなぁ…。
 勿論、その間にも莫迦戦闘モードは続行中。F君と俺は、一方ではJB氏とT嬢の攻撃を交わし、更にコチラからも仕掛けて。もう一方では各々の情人に愛を囁く、何とも忙しい羽目に陥っていた。
 余談だが、旧友同士とはいえF君と俺の恋愛パターンは対照的だった。まるで正反対。聞こえ良く言えば、博愛と純愛…といった処か。
 俺と某嬢は、アル意味で似ていた。お互いの交際を公言しつつ、ソレとは別に、複数の相手に告白されても断らない。来る者は拒まず。そんな甚だ傍迷惑な恋愛スタンスが、という意味だが(自爆)。その持てる魅力(?)で周り中に愛を撒き散らす俺と某嬢。取り巻きの数たるや、二人合わせて軽く二桁を越えていた ―― 勿論、気の毒なJB氏を含めて(笑)。
 片やF君達はといえば、旦那に気を遣いつつも着々と愛を育んでいる。互いを『永遠の恋人』と思い決めて、決して余所見はしない。そんな一途な愛を貫く二人だった。戦乱の中で、時折はぐれる事もあったが。直ぐにお互いを見付け出し、再び手に手を取って見つめ合う。正に絵に描いた様な純愛だ。どうする、旦那?(笑)
 俺の期待…じゃなくて心配を余所に、彼女の旦那はどうする積もりも無かったらしい。笑顔で二人の恋の行方を見守っていた。…ってゆーか、旦那の方にもキッチリ恋人がいるって、どーゆー事よ?!(爆)

 そんな風に、戦闘ごっこと恋愛ごっこに明け暮れて。その間に様々な行事もこなして。季節は巡り、遂には年を越してしまった。俺達は結局、莫迦げた騒ぎを繰り広げた儘に一年を終えてしまったのだ。
 こうして閑静な筈のC街の、華麗なる ―― 又は騒然たる(笑)一年は幕を閉じた。だが一年は幕を下ろしても、俺達の莫迦騒ぎは幕を開けた儘だった…。
 そもそもソコに下ろすべき幕があるのかどうか?それさえも、誰にも分からなかったのだ(苦笑)。
 C街、其処は爆弾とハァトの飛び交う街。街が元の静けさを取り戻すまでには、まだかなりの時間が必要だった。
 気の毒なC街に平和な日々が戻ったのは、旅人全員が次の地へと発った後の事になる。混戦を移住で切り抜けた旅人達。その卑怯ともいえる手法の出処を問われると、皆が口を揃えて旅団元二番隊隊長だと語ったらしい。
 ―― 何でバレたんだろう?(爆死)

 

 

≪その後の三人≫
 F君は程無くして古巣の旅団に戻り、新しい仲間と共に暫く旅を続けた。その訪問各地に、彼の奏でる龍笛の、風雅な音色が響き渡ったという。
 退団後、彼は連邦を去った。現在は本業の執筆活動に専念しているらしい。
 しかし噂では、現在も尚、彼は火器取り扱いを続けているらしい。その特殊爆弾は今も各地で活躍していると聞く。今日も何処かで、彼の爆弾が炸裂している…かも知れない(笑)。

 JB氏はその後も一人旅を続けた。各地の強者と剣を交え、更に修業を積んでいった。彼に勝負を挑んだ命知らずな輩は全て、悉く返り討ちに合ったという。
 現在は某地に居を構え、妻子と共に平和な日々を送っているらしい。

 そして俺は。今も一人、相変わらず連邦各地を彷徨っている。
 俺の旅はまだ終わらない…。

 

―― Das Ende. ――


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