だから言ったのに

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 これはまだ旅団が華やかなりし頃。我が青春の旅団二番隊の活躍…っつーか、見事な莫迦っぷり(笑)の記録である。

 ある年の末も押し迫った頃。隊長の俺はいつもの様に、隊員達に次の移住地の指示を送った。
「次はR市。」
…それだけ(爆)。
 そして部下達もいつもの様に、返事も寄越さず、てんでバラバラに移住を開始。全員の移住を確認 ―― 誰も何の報告も寄越さんから、俺が街中を走り回って、ウッカリ者が残ってないか自分で探すんだ(苦笑) ―― して、俺自身もR市へと向かった。
 R市は、過疎地好きな俺が見込んだ通り閑静な…っつーか、ぶっちゃけ寂れた街だった。此処での滞在期間は一年。次の年末に俺達は、また新たな予定地へ向かう。それが旅団の決まりだったから。特に明文化されてはいなかったが、隊長同士の暗黙の了解となっていた。

 年明け早々に恒例のリーガ試合開催。R市民はなかなかの強者揃いだった。だがコチラも負けてはいない。何といっても、我が二番隊には『無敵の侍』JB氏がいるのだ。こんな小さな村の武術家など恐るるに足らず。返り討ちにしてくれるわ!
 えっ?自分はどうなんだって?
 俺の実力は中途半端だからなぁ(苦笑)。何処の街でも二〜三回戦までは勝ち進むが、決まってソコで敗退するんだ。だから今回もどうせそうだろうと高を括っていた。
 しかし…今年の俺は一味違う。何故か順調に勝ち進み、遂には初優勝を飾ってしまったのだ。俺が強くなったのか?それとも対戦相手に恵まれたのか?ソコの処は不明だが。
 オマケに部下のC嬢も優勝、三部門中二つの武術長を、旅団二番隊で独占する事態と相成った。これで二番隊六人中四人が武術長。俺たちは名実共に旅団きっての武闘派集団になったのだ。俺の下克上も夢じゃない!(爆)
 …否、ちょっと待て?三部門しかない筈の武術の長が何故四人もいる?しかも在住民にも武術長がいるって、どうよ?!一体、何人の武術長が此処R市に居るんだ?(汗)
 …否、そんな事より。C隊員が担いでるアレは何だ?あんなバカデカい看板、何処から拾って来たんだよ?…っつーかどうする気だ、ソレぇ?!(滝汗)
 俺は慌ててC嬢を呼び寄せた。看板の出処を問う俺に、彼女は満面の笑みを浮かべて言い放った。
「アラ、コレは拾ったんじゃないわ。奪ったのよ♪」
「はぃ?」
「だからぁ、道場破りで奪い取ったの!」
「この街の道場の看板か?!」
「そうよん♪」
ソンナ処で♪はいいから(汗)。全く悪びれないC隊員に、俺は恐る恐る訊いてみた。
「まさかと思うが、君…ソレをずっと持ち歩く気か…?」
「ええ。もし次の地でも優勝できたら、また看板を頂くの♪」
だから♪はいらんと言うのに(滝汗)。呆然と固まる俺を尻目に、彼女は仲間達の元へと走り去ってしまった。…マジかよ、オイ?(溜息)
 残念ながらマジだった。自分で言った通り、C隊員は何度も旅先でリーガ試合に優勝して武術長を拝命した。そしてその度に、現地の道場から看板を奪い取るのだった。最終的に彼女の担ぐ看板は七枚に達した。彼女の死後、ソレは形見として二番隊隊員に分けられた。余りにも珍奇なその形見の品に、遺された者は大いに困惑したのだった…。

 俺が漸く看板ショック(笑)から立ち直ってみると、既に四大大会の時期が迫っていた。しかしその組み合わせ表は、俺を新たなショックに陥れたのだった。コレでは全員が初戦で仲間と戦う事になる。さては俺達の実力を恐れた在住民の陰謀か?!
 そんな下らぬ勘繰りを余所に、大会は順調に進められた。俺達は互いに潰し合い、勝者は在住民を蹴散らしていった。俺自身も止むを得ず、数人の部下を地に沈めた。上司と部下といえど、手加減は許されない。勝負の世界はキビシイのだよ(笑)。
 そして全ての相手を破り決勝戦に勝ち残ったのは、やはり旅団員だった。二番隊きっての強者、『道場破りの看板娘』C嬢と『旅団最強の侍』JB氏。遂に、二番隊最強を掛けた熱い闘いが、今始まる…。
 そんな最中、隊長の俺は何をしていたか?
 部下を蹴散らし勝ち進んだものの、準決勝でC隊員にボコられて敗退(爆死)。試合に負けて暇になったので、取り敢えず漁場へ行ってみた。漁場に着いて、他にする事も無いので釣竿を取り出して。要するに可愛い ―― かどうかは疑問だが(苦笑) ―― 部下達の死闘を余所に、呑気に釣を楽しんでたんだな、コレが。

 結局、頂上決戦はC嬢の勝利で幕を閉じた。自称弟子 ―― 彼女は勝手にJB氏を師匠と崇めていた ―― に負けたJB氏は、暫くショックから立ち直れないでいた。
 そんな慌しい一年も終わりに近付いて。そろそろ潮時だろう。俺は再び隊員達に次の移住先の指示を送った。
「次はG村。」
…だから、それだけだって(爆)。
 そして部下達も再び無言で旅立って行った。後に残った俺は、移民局で全員のG村移住を確認…しようと思ったんだけど…。
 …あれ?
 …うや?
 …何で?
 何故かC隊員の行き先だけが違う。俺は慌てて手の者 ―― 何者だ、そりゃ?(笑) ―― に現地の様子を探らせた。程なく報告がきて、彼女は既に現地で交流を始めたという。どうやら素で移住先を間違えているらしい。俺は早速C隊員に連絡を取った。
「C君、今何処に居るのかなぁ?」
「え…?」
「俺は『G村』へ行け、と言った筈だが?」
「あ゛…。直ぐG村へ向かうわ(汗)。」
「当たり前だ。だが、その前に…隊規は覚えてるな?」
「…一応は。」
「俺のハリ扇とK隊員の大漁旗、それから勿論そのバカデカい看板も。この次の移住では君が運ぶんだ。」
「はい…(泣)。」
「ぢゃ、そゆ事で♪」

 その時に移住したG村で、久々に旅団全隊が合流した。その際に、各隊で数名の隊員の入れ替えが行なわれたのだった。しかし件のC嬢と大漁旗を携えたK隊員は、引き続き二番隊に残留した。勿論それは俺の意向。二人は長年旅を続けて、そろそろ寿命も近かったから。今更他の隊に放り出すなんて事は、俺には出来なかったのだ。名ばかりの隊長で、彼等に何もしてやれないけれど。最期くらいはせめて看取ってやりたいと思ったから。
 …というのは、表向きの理由(笑)。否、勿論ソレも俺の本音だったが。実を言うと、初の隊規発動 ―― 無断単独は荷物持ち ―― をチャラにしたくなかったかったんだ(ヲイ)。
 その年も末に近付き、暫しの全隊交流に終止符が打たれる時が来た。旅団は再び三隊に別れて旅を続ける。勿論、我が二番隊も例外ではない。新たな地へ向かう俺達の足取りは、三隊の中でも一番軽かった。理由は簡単。だって全員が手ぶらだったんだから。勿論、約一名を除いて…なんだけどな(爆)。
 だから前もって『無断単独は禁止』って言ったのに。

 

―― Das Ende. ――


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