初めて物語 part3 家族計画篇



 俺がAMと出会ったのは、忘れもしない…えーと…何処だったかなぁ?…忘れちまった(笑)。でもコレだけは覚えている。彼女と出会った時、俺には確か、他に恋人がいた(爆)。けれどお相手のT嬢はひどく無口な娘で。俺は内心で、彼女に物足りなさを感じていたんだ。
 そんな時、知り合ったばかりのAMから声を掛けられた。釣りに誘われて、親しく言葉を交わして。その後も何度か二人きりで遊びに行った。その度に、彼女は色々な事を話した。どれも取り止めも無い話だったけれど、ソレが俺には楽しくて。この娘とならきっとウマくやっていける。そう思った。
 それは彼女も同じだったらしい。彼女の言葉の端々にハァトマークが仄見える様になるまで、そう時間は掛からなかった。
 で、ココでモンダイなんだけど。その時俺は、まだT嬢ともお付き合いを続けていたんだ(ヲイ)。俺は自問自答した。この儘T嬢との関係を続けるか?それともAMに乗り換えるか?
―― Tは殆ど喋ってくれないし。AMの方が一緒にいて楽しいんだよなぁ。
 やっぱりAMにしよう。俺がそう結論を出すまでに、然程の時間は要さなかった…っつーか、ぶっちゃけ、所要時間は僅か三秒(爆)。
 でも過去の痛手をシツコク引き摺ってた俺は、取り敢えずAMにこう言ってみた。
「俺は君と結婚を考えてる。例えどんなに時間が掛かっても、君と一緒になりたいんだ。だから君も、俺について来て欲しい。」
今思えば、かなり強引で自分勝手な台詞ではあるが(苦笑)。
 彼女の答えはYEs。そして俺はT嬢をフッた。しかる後に、晴れてAMと『結婚を前提としたお付き合い』を始めたのだった。

 反則技で彼女をシッカリと繋ぎ止めた俺は、何はさて置き彼女との恋愛の進展に集中した。二度とLCの時の様な想いはしたくない。一日でも早くAMと結婚しようと、ソレばかりを考えていた。何かに付けて甘い言葉を囁き、プレゼントを贈り、交換日記なんかも付けてみたりして。
 そんな俺を、口さがない友人は『根っからのジゴロ体質』なんて評したけど。構うもんか。AM自身はソレを喜んでたんだし。要は彼女の気持ちが俺から反れなきゃ良かったんだ。誰が何と言おうと、結婚しちまえばコッチのモンさ(爆)。
 俺達は着々と階段を昇り詰めていった。頻繁に連絡を取り合い、デートを重ね、口付けを交わして。そして俺は、フと気が付いた。AMってば、微妙に俺より進展の仕方が遅いかも…?
 この国では、住民間の連絡には普通『定型メッセージ』と呼ばれる書簡を利用する。その内容は互いの距離感によって異なるんだが、ソレはあくまで自分から見た ―― っつーか、連邦政府(笑)側が『コイツはコノ人をこう見ている』筈だと、勝手に決め付けた ―― 関係が基準になっている。それは友人・知人は勿論、恋人もまた同様で。俺が送れるメッセージとAMが送って寄越すソレには、丸々二段階分の開きがあったのだ。
―― そーいや彼女、定型メッセージより交換日記の方に力を入れてるもんなぁ。
 互いの恋愛レベルが同等と認められて初めて結婚を許される。今の儘じゃ、俺とAMは結婚できない。そう思った俺は、強硬手段を取る事にした。
 否、だからって別に、力ずくとかそーゆーんじゃ無かったけど(笑)。取り敢えず交換日記に「定型メッセージを使ってくれ。」と書いて、コッチからも嵐の様にメッセージを送り付けてやった。彼女がソレに返事をすれば、俺達の恋は自然とレベルアップする。俺は『定型メッセージ』の中でも甘ったるい内容ばかりを選んで送り続けた。
 結論を言えば、怒涛のメッセージ計画は見事に功を奏した。漸く互いの恋愛レベルが同等だと、公式に認定された。俺はAMを約束の丘に呼び出し、プロポーズした。俺の記憶が正しければ、確か三回程…(笑)。そんな努力の甲斐あって、漸く俺達は晴れて夫婦となったのだった。

 初めての結婚生活はまるで、砂糖漬けの様に甘々の日々だった。もう夫婦になったってのに、俺とAMは、互いに歯の浮く様な台詞を囁き合った。独身の頃と同様にデートもしたし。オマケに交換日記もまだ続けてたんだよな(爆)。
―― アノ頃は俺も若かったからなぁ。
 俺が転職したのもこの頃だ。ボ〜ッと釣りしてるより、鉱山の方が効率良く稼げそうだったから。嫁さん貰ったし、これから更に家族が増えるし。金は幾らあっても邪魔にならない。そう思ったんだ。コレでも結構、家庭を大事にしてたんだぜ、当時の俺は。…今はどうよ?って訊かれると、答えに困っちまうんだけど(苦笑)。
 やがて妻が懐妊した。「男の子と女の子、どっちかしら?」「ドッチでも、元気な子ならソレで良いさ。」なんてオキマリの台詞を交わして。
 自分で言うのもナンだが、俺は割とハンサムだったし、妻もかなり可愛かったから。生まれて来る子供の性別がドッチでも、かなりな美形になるだろう。俺達はそう期待していた。
 やがて月満ちて、AMは女の子を産み落とす。予想に違わず、実に可愛い子だ。大きくなったら、さぞかし美人になるだろう…って、そりゃ完全に親馬鹿だっつーの、俺(爆)。
 命名を任された俺は、妻の一字『A』を取ってAKと名付けた。頭文字だけじゃ分からんだろーけど、発音も合わせたんだぜ。勿論、妻もその名を気に入ってくれた。
「これから家族三人、仲良く暮らしましょうね。」
 そう言った矢先、彼女は二人目を懐妊した(笑)。次に生まれたのは、両親のドチラにも似てない(苦笑)クルクル巻き毛の男の子だった。俺の名に音を合わせて、妻がCLと名付けてくれた…って、だから頭文字じゃ分からねぇって。
 それから次女AIが生まれて、次いで三女ALが生まれて。何時の間にか俺達は、六人家族になっていた。連邦の公認記録は八人家族だから、後もう二人はいけるかなぁ?なんて、笑いながらそんな会話を交わした。

 残念ながら八人家族の夢は笑い話で終わった。でも俺達は、四人の子供に恵まれて、もう充分に幸せだった。かつて婚約時代に二人で訪れた場所へ、今度は子供達と一緒に出掛けた。博物館や遺跡を見学して、約束の丘に弁当持参でピクニックに行って。
「パパとママは此処でデートしたんだぞぉ♪」
…なんて、我が子相手に惚気てみせたりして(ヲイ)。そうそう、家族で温泉旅行に出掛けた事もあったな。
 同じ様に所帯を持った友人と『ご近所付き合い』なんてヤツも経験して。他市に住む友人も出来て、互いに手紙の遣り取りなんかして。俺は薔薇色の家庭生活を満喫していたんだ。
 何時までも、こんな幸せが続くと思っていたのに…。

 

―― Das Nicht Ende ――


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